新型コロナウイルスで対面営業が歴史的な変革に直面した

結論を最初に言います。

  • B2B企業ではこれまで対面営業が主力の販売チャネルだった。
  • しかし、新型コロナウイルスにより、対面での営業が難しくなった。
  • 実は顧客も対面営業をさほど望んでいなかった。
  • コロナ後も、非対面はB2Bでも主力の営業チャネルになり、対面営業人員は減少する。
  • 営業担当者は、環境の激変に備えて、非対面営業力とマーケティング力をつけて生き残ろう。

 

対面営業至上主義だったコロナ以前

私が2002年、大学卒業後に入社した日本マイクロソフトで配属されたのが「金融営業部」。金融機関に対面で営業を行い、社内の営業スタッフ、技術スタッフ、パートナー企業と連携してソリューションを提案して、結果としてライセンスを導入してもらうのが仕事。つまり、B2Bの営業ど真ん中の仕事をしていました。あまり優秀な営業ではありませんでしたが、泣いたり笑ったりしながらも営業としての経験値を貯めていきました。

2011年に転職して入社したフィンランド(現在はアメリカ)のソフトウェア企業、ブランコ・ジャパンの営業手法もほぼ同様。対面で既存顧客、見込み客を訪問し、製品を提案、トライアル、導入、サポートをほとんど対面で行っていました。

新型コロナウイルス以前は、ベルフェイスがどれだけ非対面での営業手法を進めても、世の中の大多数の企業は「とはいえ、顧客が対面を望んでいるから」と、顧客を理由にして「対面営業が最善の営業手法」と考えていた、と思います。確かに対面だと、打ち合わせ時の情報量が圧倒的に多く、また打ち合わせ後に一緒に飲んで仲良くするといった「寝技」の営業手法も使えるので、確かに効率的といえば効率的とも言えました。

ただ、「超大手の顧客」であれば効率的かもしれない対面営業も、「中堅以下の顧客」であれば逆に非効率かもしれない。こうした基本的な問いすらほとんど行われなかったのがコロナ以前です。

 

対面営業のパワーが弱まったコロナ以後

新型コロナウイルスは、対面営業の力の根源、つまり「対面する」ことを奪いました。その結果、対面営業担当者の力の源泉だった営業訪問、打ち合わせ時間外での顧客関係強化(一緒に飲むなど)、訪問時の情報収集ができなくなりました。これにより、B2B企業において対面営業はかつて圧倒的だったパワーを失い、非対面の営業、ならびマーケティングのパワーが相対的に強まりました。

顧客目線で見ると、よりシビアです。買う側はこれまで、慣例的に対面営業を行っていただけで、対面営業されるのが大好きだったわけではありません。デスクでヘッドセットしてベンダーの営業と打ち合わせる雰囲気ではない、ビデオ会議ブース的な設備がない、しかし来客用会議室はやたらとたくさんある、といった、主に設備とか文化の問題で対面営業を受けていた。それだけのことです。

買う側の顧客は、新型コロナウイルスが広まった後はじめて、対面ではなく非対面で営業を受ける、という変化に直面しました。しかし、会議室のスケジュールに縛られることなく、パソコンとヘッドセットさえあればどこでもビデオ会議できるし、勤務企業もビデオ会議当然の文化に一気に移行したので、ビデオ会議はむしろ効率的と考える担当者も急増しているとみるのが自然です。ビデオ会議であれば、1時間の予定の会議でも、アジェンダが終われば30分で終了するのが当たり前ですので、ベンダーの営業担当の無駄なおしゃべりに付き合う必要もなく、時間を節約できます。

新型コロナウイルスが一段落した後も、このビデオ会議当然の文化は継続するでしょう。いまさら「出席者人数を確認して、会議室予約して、見苦しくない格好で会議室まで移動して、1時間枠をフルに使って無駄話にも付き合う」非効率に戻りたい顧客は少ない、と見る方が自然です。

 

B2B企業における対面営業はマイノリティーになる

これまで、営業=対面営業、として大量に営業を雇用してきた企業であっても、一部の大手顧客の担当者でもなければ、営業の職種転換を行うようになるでしょう。つまり、トップ営業のみ大手顧客向けの対面営業として残して、それ以外は非対面の営業に転換する、ということです。より効率的に打ち合わせを詰め込んでも、非対面であればそれをこなせます。

これは「営業における効率性」の定義がほぼ逆転した、という歴史的な転換点です。311でも、リーマンショックでも、ライブドアショックでも、これだけの大転換は来ませんでした。本当に歴史的です。

ちなみに、マーケティングが創出したリードを工場の流れ作業のようにこなす非対面営業と、大手顧客にだけ配属される対面営業。この仕組みで既にまわしているのがセールスフォースドットコム(SFDC)ですが、SFDC以外でもこの仕組みが一般化し、かつ、対面営業と非対面営業の人員比率はより極端になっていくと予測します。対面営業1: 非対面営業9、といった具合です。

 

「非対面で大型商談をクローズ」が当たり前になる

対面と非対面の営業は基本的に違いはありません。顧客の課題を聞き、その課題を解決できる提案を持ち込み、テストして、購入してもらう。それだけです。

非対面営業が当たり前になったコロナ後の営業では、かつての「対面営業は高額案件」「非対面営業は低額案件」という金額レンジがいったん仕切り直しとなり、億単位の案件が非対面でクローズされるのが当たり前の世の中になっていくはずです。

将来は、「大型の購入を決めてくださり、ぜひ一度対面でお礼を」という営業担当と、「いや、来てもらっても困るので、そういうの結構です」というやり取りがされるんじゃないかと思います。

 

営業担当者は対面でも非対面で強くなって生き残る

圧倒的だった対面営業パワーが削がれるという事態に直面した、対面営業担当者はいま、何をすべきでしょうか。それは、非対面の営業に強くなることです。具体的には以下をすべきです。

  • ビデオ会議ツールに慣れて使いこなす。
  • 非対面営業でのトークに慣れる。対面営業と何が違うかを研究し尽くす。
  • 非対面営業に最適化されたスライドを作る。
  • リードを拾うだけでなく、リードを創出することにも携わる。

端的に言うと、営業の幅を広げ、マーケティングにも片足突っ込むくらいの勢いで仕事の幅を広げる。これで生き残れると思います。逆にここを怠ると、将来の可能性を一気に狭めてしまうことになるでしょう。